仮想デスクトップ/シンクライアント

モニター一体型ゼロクライアント「SyncMaster NC240」によるデスクトップ仮想化。2011年12月の新社屋移転に伴い、全フロアに400台規模でゼロクライアントを導入。

クオリカ株式会社様

クオリカ株式会社は、1982年にコマツの情報システム企業として創立。現在では日本有数のSIerグループであるITホールディングスの一角を成し、社員数は713名を数える(2011年12月時点)。その出自から、おもに製造業、流通・サービス業のクライアントを数多く抱え、基幹システム、品質管理、アウトソーシング、ITコンサルティング、POSシステムに至るまでありとあらゆるシステム業務を受託・開発している。
今回紹介する事例は、日本のみならず世界的に見ても“最先端”とも言うべきデスクトップ仮想化(VDI)である。2011年末の新社屋移転に伴い、エルザ ジャパンが提供するゼロクライアント「ELSA VIXEL D200」 とSAMSUNG製モニター一体型ゼロクライアント「SyncMaster NC240」を400台以上の規模で導入。果てない地平を思わせる高層ビルのワンフロアに、「SyncMaster NC240」の大画面23.6型のモニターがずらりと並ぶ。机上にあるのは「SyncMaster NC240」とマウス、キーボードのみ。各社員は出社時にモニターの電源を入れ、立ち上がってくるVMware Viewにログインし、スムーズに業務を開始する。そこにあるはずのPCの姿は見当たらず、まるで近未来のオフィスを具現化したかのよう。VDIのサーバは栃木県にあり、ゼロクライアントを導入したため、このオフィスにはデータがない。この大胆な仮想化は「自分たちが何を求め、何をやりたいか」という揺るぎないビジョンの結果なのだという。契機となったのは先の東日本大震災。震災直後、業務がマヒした状態に陥り、どこにいても業務を続けられるBCP(事業継続計画)対策が急務となった。そこで経営陣トップの号令のもと、以前から実行してきた「仮想化への段階的な取り組み」や「社内インフラ刷新」の提言を改めて集約し、わずか数ヵ月の早さで理想のシステムを導入するに至っている。
もう1つの大きなテーマとして、「ユニファイドコミュニケーションの実践」と「オフィス内のフリーアドレス導入」が挙げられる。デスクには電話すらなく、コミュニケーションツールはすべてIP化されている(会話用として1人に1台ヘッドセットを配布)。もちろんWebカメラによるビデオ会議システムも常備され、会議室や打ち合わせスペースも42型の大型モニターと「ELSA VIXEL D200」により完全に仮想化。社内のどの場所にいても同じ環境で仕事ができる工夫がなされている。
旗振り役となったのは、技術部全社ITアーキテクト主幹の坪口智康氏、アウトソーシング事業部営業推進室主査の藤野哲氏。坪口氏はユニファイドコミュニケーションの推進や斬新なオフィスのゾーニングなど俯瞰的な視点から全体を見渡し、藤野氏は過去の経験を踏まえた上で、理想的なデスクトップ仮想化の実現に向けて尽力した。以下、それぞれの立場からゼロクライアント化、中でも「SyncMaster NC240」による仮想化導入までの経緯を話していただいた。

クオリカ社内仮想化イメージ図

デスクトップだけではなく、コミュニケーションインフラすべてがクラウドになっています

―まず、「SyncMaster NC240」を実際に導入してみての手ごたえはいかがでしょうか。―

坪口氏「昨年(2011年)末に引っ越してきましたが、新オフィス勤務初日の午後には多くの社員が通常業務に戻っていました。前回(東陽町への移転。2003年)の移転時に1週間ほど大混乱を来たしたことを考えると、今回のスムーズさは我々の想定以上です。BCP対策としてVDI導入を検討した一連のゼロクライアントソリューションは、今回の社屋移転で、本来の役割を無事に実証することができたと思います」藤野氏「機器の説明なども、さほどしたわけではありません。比較的、社員がスムーズに利用してくれています」

―大胆な仮想化のねらいはどこにあるのでしょうか。―

坪口氏「弊社ではこの春に、3ヵ年の中期計画を作成する予定です。戦略としては、VDIをはじめとするクラウド環境をグローバル展開していくというものになります。つまり2012年はそのスタートの年に当たります。今回のようなゼロクライアントを含めた弊社内のコミュニケーションインフラというのは、グルーバル展開する意味では非常に大きな武器になる。まさに、自分たちが導入・実践してみた上で、他社様へ展開するという事例になるわけです。今回はVDI (VMware View)上でユニファイドコミュニケーションを動かしています。つまり、デスクトップだけではなく、コミュニケーションインフラすべてがクラウドになっているのです。オフィスのコンセプトの1つとして、私たち自身がビジネスのショールームになるという考えがあります。例えばお客様を呼んで現場を見ていただくことで、新しいビジネスの拠点になるようにしたいと思いがあるのです」

―非常に大きなビジョンが根底にあるわけですね。―

藤野氏「はい。そもそもは『インフラを入れる』ことが目的ではなく、『何のために行うのか?』という定義づけから開始しました。その出発点から、最適な方法が何であるかを考え、VDIであったり、ユニファイドコミュニケーションであったりという方法が導きだされたのです。その動きがある中で、本社の移転も重なりました。ならば、これを機に一気に移行してしまおうと。そもそもは5年ほど前に営業職や管理職など、ひんぱんに外出する社員たちのPC持ち出しを禁止する目的で、ブレードPCを導入しました。しかし実際に導入してみると、課題やトラブルなどが多くありました。当時はバックボーンインフラや3G回線のひ弱さで問題が多発しており、その状態から発展するのがなかなか難しい面がありました。
今回はそれらの機器がちょうどリースアップのタイミングと重なったため、その候補として挙がったのがVDIだったのです。しかし懸念していたのは、再び同じように一部セクションのみの導入となると、結局は良さが出ないという点です。それらの理由から、導入するなら全社切り替えを視野に入れたいという要望を出し、坪口とも方向を話し合いました」

東日本大震災によりBCP対策が急務に。震災が大きなターニングポイントになりました

坪口氏「最初の計画ではVDI導入は200台。全社員ではなく本社スタッフを中心としたリプレースでした。全社員に切り替えたターニングポイントは、2011年3月の東日本大震災です。震災直後、スタッフによっては非常に長い期間の自宅待機を強いられました。弊社の顧客はコマツ様を含めてグローバル企業が多く、加えてリテール系の24時間動いておられるクライアント様も数多くいらっしゃいます。このような状況で1日でもロスをしてしまえば損害も甚大です。つまり、BCP対策が急務となったのです。
そこで代表の西田(光志氏)の一声で、開発者がスムーズに利用できるVDIを提供せよというミッションが下りました。忘れもしない、まだ機能がマヒしている3月20日頃です。私自身、社内インフラを変えたいという提言を以前から行ってきたこともあり、そこに迅速なBCP対策が求められたことから、社内インフラを刷新するというミッションを受けました。
ユニファイドコミュニケーションなど自社で実現したいことを全社的な仮想化技術の導入で成功すれば、国内だけではなく、グローバルとしても数少ない事例の1つになります。この点も『チャレンジさせて欲しい』と経営陣にアピールした点です。弊社は現在720人ほどの規模ですから、動きやすい部分もあります。『せっかく先端事例を導入するのであれば、一番でなくてはならない』というのが、西田からのメッセージでした」

―エルザ ジャパンが提供するSAMSUNG製モニター一体型ゼロクライアント「SyncMaster NC240」を選択された決め手は?―

坪口氏「本社の社屋移転が5月に決定した時、私は『IP化した上ですべてをコラボレーションして、ユニファイドコミュニケーションを導入したい』と主張しました。VDI上でユニファイドコミュニケーションを動かし、かつシームレスでなくてはいけない、加えてモバイルデバイスからのアクセスも実現しなくてはいけないという課題がありました。
もう1つ、オフィスゾーニングの問題をクリアする必要がありました。今回のコンセプトで重要になるのはフリーアドレスです。組織変更のたびに切り替えにかかるランニングコストが一切かからなくなることを目指しました。この点に関しては一般的にはノートPCを抱えて好きな場所に移動して働く方法が存在します。大いに悩みましたが、その方法ではPCは結局“個人”に紐づいているわけです。つまりノートPC方式を採用してしまうと、今度はVDIを導入する意味がなくなります。また、どこでも仕事ができるというBCP対策の観点からも外れてしまいます。そこで『どのように解決するか』といろいろ試した時に、PCoIP+ゼロクライアントの方法であれば、シンクライアントと異なり多くのUSBデバイスを利用でき、非常に品質が高いことがわかりました。あとはOSがありませんので、実にセキュア。最終的な判断はその点が大きかったですね」
藤野氏「フリーアドレスにするのであれば、なるべく配線の数を減らしたいという目論見がありました。さらに、モニターだけですからコンセントの数が半分で済みます。そうしたオフィスデザインの面がまず1つあります。さらに開発者の立場からすると、画面が大きいというのはそれだけで非常に生産性が高くなります。彼らはソースコードを長時間見たり、膨大なメールの履歴一覧を検索したりといった作業が多い。これまではノートPCでの作業も多かったためにソフトを表示する時に全画面表示にしなくてはいけませんでしたが、『SyncMaster NC240』は23.6型の大画面ですから、複数のウィンドウを開いて作業ができます。そうした生産性向上が大きなもう1つの柱です」

我々がお客様に提案するためにも、モニターの月額モデル導入は必須でした

―今回は月額レンタルということですが、この形態を選択された理由は?―

坪口氏「今後、我々がお客様に提案する側として月額モデルのパフォーマンスの良さも含めて提示することが必要になるからです。実際、VDIも月額モデルでそれぞれの部門が負担しています。そこで、今回VDIに付随する端末も月額モデルで設定することにしました。ワンセットモデルのパッケージにすればコスト面でも考慮しやすいですし、償却モデルも作りやすくなります。このモデルを構築することで、お客様に展開したいという思いがあります」
藤野氏「経営ビジョンに対して『ITがサポートできることとは何か?』を考えた際、経営層と我々の現場のベクトルが同じという点も大きいです。機器を導入する時には、まずビジョンに合致しているかどうかを考察します。また、既存のソリューションも含め、シームレスに運用できるかどうかという点を常に念頭に置いています。このビジョンがないと、その都度の流行に手を出してしまい、結果的に連携ができなくなってしまうことが多い。そこは絶対に避けたかった点ですので、同じ方向を目指すことは最初から意識して行ってきました」
坪口氏「実は引っ越す前、東陽町のオフィスにいる時にBCP対策でVDI導入は始まっていました。その時はリッチクライアント上でVMware Viewを動作させていました。そうした背景もあり、引っ越す前に『今回のVDIはどこがどう違うのか?』という声が開発者からあったのは事実です。中には『VDIだと遅いのでは?』といったネガティブな声もありました。
しかし、実際に利用してみて彼らは非常に驚いていますね。何しろ『SyncMaster NC240』の電源を投入して10数秒ほどでログイン画面が出て、すぐに利用できるわけですから。以前のリッチクライアントによるVDI環境では、ログインまで数分かかっていましたからね。また、帰宅時にもシャットダウンが必要なくなる。電源を切ればいいだけですから。感覚としては家電製品、たとえて言うならテレビに近いものがあります。
社内では毎日席を変えるように声がけしています。座席が決まっていればどうしても隣席の人間としか話さなくなってしまいますが、フリーアドレスを導入することで社内も少しずつ活性化していきます。私は横断的なコミュニケーションを目指しています。事業部を超えて、部門のスペシャリストたちとざっくばらんに交流して欲しいのです。話したこともないスタッフ同士が会話することで、新たな魅力を発見することにつながります。例えば会話を交わす中で、ある問題やテーマに対して博識なスタッフを発見したら、その問題に対応する時に相談してみようと思うでしょう。それこそが、モノを持たずに好きな場所に移動できるフリーアドレスの利点です」

お客様プロフィール

商号
クオリカ株式会社
本社
東京都新宿区西新宿8-17-1
御担当者様
クオリカ株式会社
技術部 全社ITアーキテクト
主幹
坪口 智泰 氏
クオリカ株式会社
トソーシング事業部
営業推進室
主査
藤野 哲 氏

Product – PCoIP Solution

商号
株式会社エルザ ジャパン
住所
〒105-0014 東京都港区芝3-42-10 三田UTビル
TEL.03-5765-7391 / FAX.03-5765-7235
概要
エルザ ジャパンが提供するPCoIP(PC-over-IP)ソリューションは、モニター一体型とモニター接続型の2つのタイプからお選びいただけます。
これらはPCoIPプロセッサを搭載した、CPUレス、HDDレス、OSレスの高セキュリティ性をもった次世代のシンクライアント「ゼロクライアント」端末です。また、PCoIPプロトコルが、先進の仮想化技術を提供しているVMware社のVMware Viewに採用されたことにより、シンクライアントを使った仮想環境に比べ、より素早く、より安全な仮想デスクトップ環境を提供することができます。
製品
SAMSUNG SyncMaster NC240
● CPUレス、HDDレス、OSレスの高セキュリティ ゼロクライアント端末
● 省スペース化に最適なモニター一体型
● 23.6型のゆとりのあるデスクトップ(最大解像度1920 ×1080)
● スピーカー内蔵、ピボット対応、マルチディスプレイ環境対応の高い汎用性
ELSA VIXEL D200 ゼロクライアント
● CPUレス、HDDレス、OSレスの高セキュリティ ゼロクライアント端末
● ELSA VIXEL D200に対し、USBデバイスの制御が可能
● 最大解像度1920 ×1200の2画面出力対応
● DVI-I出力× 2、スピーカー出力、マイク入力、USB × 4の豊富なインターフェース
  • *記載されている内容は予告なしに変更される場合があります。

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