TRONSHOW訪問記
2024年12月11(水)~13日(金)に開催された「2024 TRON Symposium」の訪問レポート
イベントレポート
TORNプロジェクト40周年
今回、「TRONSHOW」訪問記を担当するアクシオのMです。よろしくお願いします。
スマートシティやIoT時代の到来のとともに、アクシオは2020年より「TRONSHOW」に参加しています。今年はTRONプロジェクトの大きな節目となる40周年を迎え、この記念すべき「TRONSHOW」の開催を心よりお祝い申し上げます 。 40周年の節目に掲げた「TRONSHOW」のテーマは “AIとTRONとの融合” です。TRONプロジェクトはAIとの融合という新たな挑戦をスタートし、組込みシステムの基盤から、スマートホーム、さらにはスマートシティに至るまで、一貫して40年間貫いてきた「オープン」という哲学とともに次の時代を切り拓いていくとメッセージしています。
会場は渋谷の中心地
「TRONSHOW」40周年の会場は渋谷の中心地・渋谷PARCO DGビル18階にある『Dragon Gate』で開催されました。 「Dragon Gate」は、近年リニューアルオープンした渋谷カルチャーの代名詞的存在「渋谷PARCO」の最上階に位置し、多目的に使用できるカンファレンスホールです。広々とした会場では、最新のスクリーンや音響設備を活用した講演が行われ、TRONプロジェクトの未来に繋がっていく展望やワクワク感とも相まって素敵な雰囲気を醸し出す会場でした。また、会場入口には歴史的なコンピュータにまつわる偉人のAI音声が聞けるコーナーも設置されるなど、趣向を凝らした演出も見られました。
坂村先生の基調講演「AI X TRON」
「TRONSHOW」のスタートは、坂村先生の基調講演でした。TRONプロジェクトの40年の歴史を振り返りながら、さまざまな取り組みが紹介されました。リアルタイムOSの開発とオープンアーキテクチャとしての公開、そして民間企業の支援を受け、実証実験を重ねてきた先進的な取り組みは、当時”夢のような暮らし”とされた住宅やビル、生活空間での活用ケースを実用化へと導き、まさに現在の暮らしに繋がってきているのだと実感しました。
今年、坂村先生が更なる飛躍として掲げたテーマは「AI X TRON」。
皆さんも生成AIや、それを支える大規模言語モデルが驚異的なクオリティとスピードで社会生活に影響を与えてきていることは実感していることでしょう。講演ではIoTデバイスによるモノ、センサー、人とのコミュニケーションにおける超機能分散システム(HFDS:Highly Functionally Distributed System)環境※1の説明や、歴代の “電脳住宅” のお話、さらにはAIとの融合についての展望が語られました。
坂村先生の講演の中で特に興味深かったのは、「IoTだけでは気の利く自動化は意外と難しい」というお話でした。坂村先生は、AIが上手に「気の利く」役割を担い、コンピュータが人間の社会生活により自然な形で溶け込んでいくべきだと述べています。
今後、AIを使いこなすことがあらゆる分野で求められる時代になるとのことで、すでに先駆けて学生への教育活動にもOpenAIのChatGPTに代表されるAI活用をすでに積極的に導入しているとのことでした。
HDFS(Highly Functionally Distributed System)※1
TRONプロジェクトはHFDS概念の提唱当時の1987年に、近い将来に高度にコンピュータ化された社会 —電脳社会— が来ることを想定しています。電脳社会においては、我々の日常生活を取り巻くあらゆる機器、設備、道具にマイクロコンピュータが内蔵されます。さらに、それらがコンピュータネットワークにより相互に接続されて、協調動作することにより、人間の活動を多様な側面から支援されます。コンピュータが内蔵されネットワークに接続された機器を、インテリジェントオブジェクト、それらが接続され協調動作するシステム全体を超機能分散システム (HFDS: Highly Functionally Distributed System) と命名しています。HFDSの実現は、TRONプロジェクトのもっとも重要なゴールで、HDFSを坂村先生は分かりやすい言葉で、「どこでもコンピュータ」という愛称も名付けていたそうです。
IEEEマイルストーン受賞記念
「IEEEマイルストーンとは」「TRON 電脳住宅」
龍谷大学名誉教授の長谷智弘氏からは、「TRON Intelligent House」の歴史的意義と現代のIoT住宅への影響について講演されました。最初に1989年に竣工された「TRON電脳住宅」がIEEEマイルストーン※2 に認定されたお話がありました。昨年は、TRONリアルタイムOSファミリーが認定されているので、下流のエッジノード(組み込みRTOS)に次いで、今年は上端のIoTプラットフォームが認定されるという2年連続の快挙となっています。
「TRON電脳住宅」は、約1000個ものコンピュータがネットワークに接続され、今でいうところのIoTを実現しています。電脳住宅ではHFDS環境※1の概念に基づき建てられているそうです。人間の活動を多様な側面から支援する環境をデザインし、実際に人が住んで、暮らしぶりのデータ取得などもおこないシステム検証もなされたとのことです。
講演を聞きながら、35年も前に現代の「スマート住宅」を作っていること、そして当時の先進的なシステム考え方が、今まさに具現化され、私たちの家庭にも到来してきていることに驚きを感じました。改めて表彰の意義を感じました。
IEEEマイルストーン※2
IEEEの広範な活動分野である電気・電子の分野の画期的なイノベーションの中で、公開から少なくとも25年以上経過し、社会や産業の発展に多大な貢献をした歴史的業績を認定する制度のこと。
アクシオの出展ブース
アクシオの今年の出展テーマは “次世代Wireless” 。IEEEの802.11規格として無線LANは、皆さんにもお馴染みだと思います。ブースでは、Alcatel Lucent Enterprise社のOmniAccess Wirelessの「Stellarシリーズ」のご紹介をしました。 Wi-Fiは毎年のように新しい規格が登場し、製品も日々進化しています。今回ご紹介した無線アクセスポイントは、Wi-Fiの6EやWi-Fi 7といった最新の機能を搭載し、IoTでのモノや人のトラッキングに対応しています。また、お客様の利用用途に応じて豊富なラインナップから選択できるのも「Stellarシリーズ」の特長です。GPSが使えない地下街や建物内の位置検知として有効なトラッキング技術は、注目の技術です。
「Stellarシリーズ」の詳細はこちら。
https://www.axio.co.jp/products/network/wireless_lan/alcatel_omniaccesswlan.html
展示会場セミナー
会場でのセミナー講演は株式会社アクシオ 営業本部 第1営業部所属の石橋さんが登壇して講演しました。
アクシオ講演では、無線LANやBluetoothなどにおけるIEEEの規格の歴史をたどり、最新のIEEE802.11be(Wi-Fi 7)のメリットについても説明がありました。次世代のWi-Fi 7規格は、AR/VR、超高解像度ストリーミング(8K以上)、産業用途でのリアルタイム制御や自動運転車に対応するという低遅延と高スループットを両立する無線LANです。PCやスマホ、IoTセンサーをはじめ、あらゆるものがインターネットに繋がっていく未来に向けて、インフラ環境もどんどん進化していきます。新しい技術に乗り遅れないようにしていきたいと思います。
最後に
私も毎年参加させていただいていますが、参加されている関連企業やTRONプロジェクトに関係する教育機関の皆様はさまざまなテーマや社会課題を解決すべく、未来志向・ポジティブ指向で技術開発や社会実装にとても前向きに取り組んでいることを実感させられます。最先端技術のお話と実生活への応用が盛りだくさんの「TRONSHOW」は、IT企業に勤める自分自身にとってもICT社会の未来が感じられる、モチベーションの上がる3日間でした。
Alcatel Lucent Enterprise社のOmniAccess Wirelessの「Stellarシリーズ」 の詳細はこちら。
https://www.axio.co.jp/products/network/wireless_lan/alcatel_omniaccesswlan.html
(天井に龍(ドラゴン)のデザインがあるTRONSHOWメイン会場の写真)